その他
職権で閉鎖された登記記録の復活
解散の登記をした後、清算結了の登記をしないまま10年を経過すると、登記官は登記記録を閉鎖することができます。
しかし、登記記録が閉鎖されても清算が結了したわけではなく、会社財産が存在し、当該財産を処分しようとする際に登記事項証明書が必要になる場合があります。登記記録が閉鎖されていると登記事項証明書は取得できません。
このような場合には「清算を結了していない旨の申出」をして会社の登記記録を復活してもらうことができます。
一方、解散の登記も職権でされ、その後登記記録も職権で閉鎖されてしまった場合は、清算人の登記申請をすることで登記記録が復活されます(登記研究549【7400】)。
免責の登記
他社から事業の譲渡を受ける場合に当該他社の商号も譲受けることがあります。
事業を譲受けた会社が譲渡会社の商号を続けて使用する場合、譲受会社は譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法第22条第1項)。ただし、譲受会社が譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨(免責)の登記をした場合には債務を負いません(同法同条第2項)。
商号変更と併せてこの免責の登記を行う場合もありますが、事業を譲り受ける会社を譲り受けた商号で設立し、設立登記後に免責の登記を行うこともあります。
登記の事由
商号譲渡人の債務に関する免責の登記
登記すべき事項
当会社は令和◯年◯月◯日商号の譲渡を受けたが、譲渡会社である◯◯株式会社の債務については責めに任じない
添付書類
承諾書(譲渡人による免責)
委任状
資本金の額を増加した日を錯誤により更正
払込期日を◯月28日と決議したものの議事録に誤って翌月の1日と記載し、1日に増資したとして登記してしまった場合(募集株式の引受けに係る払込は◯月28日)、当該払込期日に誤りがあったとして錯誤を証する書面を添付して増資日及び発行済株式総数の変更日を◯月1日から◯月28日に更正登記を申請します。
*錯誤を証する書面は、修正された株主総会議事録と上申書を添付しました。
*払込期日の日が増資日(効力発生日)となります。
監査等委員会設置会社へ移行
平成27年5月1日施行の改正会社法により新たに導入された監査等委員会設置会社に移行する場合、株主総会でその決議をします。
これにより監査役は全員退任し、新たに監査等委員が選任されます。
登記の事由は次のとおりです。
監査役会設置会社の定めの廃止
監査役設置会社の定めの廃止
監査等委員会設置会社の定めの設定
取締役、代表取締役及び監査役の変更
取締役・監査等委員の変更
場合によっては、
非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限に関する規定変更
重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する事項の設定
会計監査人の変更なども。
特別清算申立 -対税型-
100%子会社が休眠状態で、親会社が子会社に対し、債権を有している場合、親会社の会計上債権が残ったままとなるため、子会社を解散して清算することがありますが、この場合、特別清算手続をとった方が税務上得策であるらしいです。
特別清算の申立手続の流れは次のとおりです。
株主総会(解散・清算人選任)→解散・清算人選任登記→公告・催告→特別清算申立→特別清算開始命令→公告→親会社と子会社(債権者と債務者)との和解契約→和解許可申立→和解許可決定→債務弁済&残債権放棄→特別清算終結決定申立→特別清算終結決定→公告→特別清算終結登記→会社登記閉鎖
期間は、株主総会から最後の登記まで約6か月ほどでした。
株式売渡請求 -キャッシュ・アウト-
平成27年5月1日施行された改正会社法で新設された株式売渡請求制度は、特別支配株主(総株主の議決権の10分の9以上保有)が対象会社の少数株主全員に対して株式売渡請求を行い、特別支配株主は少数株主(売渡株主等)の全株式を取得することができるというものです。
株式売渡請求(特別支配株主による少数株主の全株式取得)の流れ
①特別支配株主が、対象会社の株主(当該対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、株式売渡請求を行う旨、対価として交付する金銭、取得日など一定事項を対象会社に通知
②対象会社による承認(取締役会設置会社においては、取締役会の決議)
③対象会社による特別支配株主への承認又は不承認の通知
④対象会社が②の承認をした場合、取得日の20日前までに売渡株主へ通知
⑤対象会社が株券発行会社の場合、取得日の1か月前までに株券提供の公告、かつ、通知を要する。株式の全部について不発行の場合は公告・通知は不要
⑥④の通知の日から対象会社による事前開示書面を本店に備え置かなければならない
⑦売渡株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができる
⑧特別支配株主は、取得日に売渡株式の全部を取得する
⑨対象会社は、取得日後遅滞なく6か月間(非公開会社は取得日から1年間)事後開示書面を本店に備え置かなければならない
支店設置 -本店と同一管轄-
支店を新たに設置する場合、取締役会設置会社は取締役会の決議で、取締役会非設置会社は株主総会の決議や取締役が決定しますが、支店設置決議の内容は、①支店設置する旨、②支店所在場所、③支店設置日となります。
支店も登記事項で、所在場所が登記事項ですので、②は「福岡支店」ではなく、例えば、福岡市中央区天神一丁目1番1号と決定する必要があります。
登記申請の際には当該決議又は決定したことを証する書面の添付が必要になります。
会社の解散と清算人選任
株主総会で会社の解散決議をすると解散後は営業を前提とした行為ができなくなり、取締役は自動的に退任となります。
取締役退任後は、清算人が清算事務を行うことになりますが、定款に清算人の定めがある場合は定款に従い、定款に定めがなく選任決議もされなかった場合は従前の取締役が清算人となります。しかし、多くの場合、取締役全員が清算人となる必要も無いため、解散決議と同時に清算人1名又は若干名を選任します。
解散及び清算人の登記後は、代表取締役の印鑑証明書は取得することはできませんが、代わりに清算人の印鑑証明書が取得でき、解散後の法律行為で印鑑証明書が必要な場合は、清算人の印鑑証明書を提出して清算事務を行います。
解散の登記申請は清算人が申請人となり、解散と同時に清算人の登記も行います。また、当該申請において、代表取締役に代わり清算人が会社実印の使用者となるため、清算人の印鑑届も必要です。
監査役会設置会社の定めの廃止
大会社でも公開会社でないものは、監査役会は必置の機関ではなくなったため、監査役会を廃止することができます。
株主総会において、監査役会設置会社の定めを廃止する定款変更決議を行い、当該廃止の登記申請を行います。その際に、当該廃止の登記の他に、社外監査役である旨の登記も抹消しなければなりません(責任限定契約を締結している場合を除く)。
株券を発行する旨の定めの廃止
会社法施行(H18.5.1)後に設立された株式会社は、原則として、株券不発行会社ですが、会社法施行前から存在する株式会社は株券発行会社として、その旨の登記がされています。定款にその定めがなくても、会社法施行時の経過措置規定により、定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされ(整備法76条4項)、その旨の登記がされました(整備法113条4項)。
したがって、株券不発行会社とするには、株主総会の特別決議で、株券を発行する旨の定めを廃止する定款の一部変更の決議をする必要があります。
また、実際に株券を発行されている場合と、株券不所持の申出等により株券を発行していない場合では、手続が異なり、登記の際の添付書類も異なります。
株券を発行している場合、株券廃止の効力発生日の2週間前までに、①株券を廃止する旨、②効力発生日、③効力発生日に株券は無効となる旨の公告及び株主に各別に通知しなければなりません。
そして、公告したことを証する書面が登記の際の添付書類となります。
一方、株券を発行していない場合、株主に通知は必要ですが公告は必要ありません。この場合、株券を発行していないことの証明書が登記の際の添付書類となります。
取締役会廃止+監査役廃止+株式譲渡制限変更
取締役の方が辞任や死亡などで退任したことを機に、定款規定を見直し、取締役会を廃止するということも多くなりました。
取締役会を廃止すると取締役が3名以上いる必要はなく、1名以上いればよいということになります。
取締役会を廃止すると「株式を譲渡するときは取締役会の承認を要する」旨の株式譲渡制限規定も変更する必要があり、また、その旨の登記も必要です。
さらに、取締役会を廃止すると監査役も置く必要がなくなりますので、監査役も廃止することができます。監査役を廃止すると現任監査役は、廃止の時をもって退任となります。
所在不明株主の株式売却許可申立
5年間株主総会招集通知及び配当を受領しない所在不明の株主がいる場合、当該株主の株式について、裁判所の許可を得て売却することができます。
申立には、宛て所不明で戻ってきた株主総会招集通知及び配当通知を添付しますので、連続して5年分の戻ってきた招集通知等を保管しておいて下さい。
申立時に株価算定が必要となり、純資産方式やDCF方式などの算定方法があります。
例えば、
過去の売買事例の売却額で申し立てることも可能で、株券発行会社の親会社が買い受けるということで、福岡地方裁判所商事非訟係に所在不明株主の株式売却許可申立を行ったところ、割とすぐに許可が出ました。
会計監査人の辞任と就任
現任会計監査人が辞任する場合、現任会計監査人からの辞任届、後任会計監査人を選任した株主総会議事録、後任会計監査人の就任承諾書(又は監査契約書)、後任会計監査人が監査法人であるときは、当該法人の登記事項証明書(法人番号でも可)、そして司法書士に対する委任状が添付書類となります。
本店所在場所の錯誤による更正
本店移転決議をし、本店移転の登記までしていたところ、その本店所在場所に誤りがあり、誤った本店で登記されていたという場合、本店の更正登記をすることができます。
錯誤による更正登記申請する際には錯誤を証する書面が必要です。
例えば、取締役全員からの上申書など。
会計監査人の重任
会計監査人は、定時株主総会で解任や再任しないなどの別段の決議がなされなかったときは、再任されたものとみなされます。
再任されたものとみなされた場合、再任の日を確認するために株主総会議事録が会計監査人の重任登記の添付書類となります。この場合、株主リストの添付は不要です。
債権放棄してもらって清算結了
清算結了の登記申請には会社法施行規則第150条に定める決算報告書を添付しなければなりません。
例えば、
解散会社の債務が当該会社の代表者に対する債務のみの場合、当該債務を解消しないことには清算結了できませんので、代表者が会社に対する債権を放棄すれば清算事務が終了したとして清算結了の登記を申請することができます。
株式譲渡承認請求
譲渡制限株式の譲渡承認請求の流れ
譲渡制限株式を譲渡する場合、譲渡しようとする人は、当該譲渡制限株式を特定の譲受人が取得することにつき、会社に対して、譲渡する株数及び譲受人の氏名又は名称を明らかにして、承認するか否かを請求することができます。
*譲受人が決まっていない場合は譲渡承認請求できません。
会社は、譲渡承認請求の日から2週間以内に承認するか否かを譲渡承認請求者に通知しなければなりません。譲渡につき否認した場合でも、その通知が2週間以内に譲渡承認請求者になされなかったときは、譲渡を承認したものとみなされます。
また、会社が譲渡を承認しない場合には、当該会社あるいは指定買取人が対象譲渡制限株式を買取ることもあらかじめ請求できます。
*会社が買い取る場合には、分配可能額を超えることはできません。
取締役会廃止のメリット・デメリット
非公開会社(全部の株式について譲渡制限がある会社)の場合、取締役会は必置の機関ではなくなり、取締役会を置かなければ取締役は1名でもよいことになりました。
メリット
・取締役の最低員数(3名)の制限が撤廃されるので、取締役は1名でもよくなり、他人に取締役就任を依頼する必要がありません。
・取締役が1人、あるいは家族だけとなった場合は、取締役の任期を延長して役員変更の登記費用を抑えることができます。
・取締役会を廃止すると監査役の設置義務もなくなります。
デメリット
・定款の大幅な見直しをしなければならず、定款変更による登記申請が必要となり、これに伴う登記費用がかかります。
・株主総会が会社の最高意思決定機関となります(所有と経営が同一であれば問題ありません)。